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山梨県弁護士会について

声明・総会決議

新型コロナウイルス感染症ワクチンの非接種者への差別などに反対する会長声明

 新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)感染拡大によるパンデミックから2年が経過し、今現在も感染が拡大している。

 当初は、感染された方々や医療従事者、その関係者に対する心ない差別や偏見が深刻化し、山梨県においても感染者への非難や中傷がインターネット上で広がった事案も発生したことから、当会では、2020年5月15日、「感染者や医療従事者を含むすべての方々に対するあらゆる差別や偏見、そしてこれに基づく誹謗中傷やプライバシー侵害等のあらゆる人権侵害行為について、強く反対するものである。」との会長声明を発出している。

 その後、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種が進む中、ワクチン接種をしていない方への差別や不利益な取扱いが明らかとなってきた。2021年5月14日・同月15日及び10月1日・同月2日に日本弁護士連合会が実施した「新型コロナウイルス・ワクチン予防接種に係る人権・差別問題ホットライン」には、ワクチンを接種しないことを理由に、職場において解雇・降格等をされた、大学や学校などにおいて対面授業や実習を受けられなかったなどの相談や、いわゆる「ワクチンパスポート」の利用に関して差別的取扱いへの不安を訴える相談が多く寄せられている。当会においても、山梨県内においてワクチンを接種していないことを理由に以前から継続的に利用していた福祉施設の利用を拒否された等の相談事例があったことを把握しており、また、市民の方からワクチンを接種していないことを理由とする差別や不利益的取扱いに対する活動を求める声が寄せられている。

 ワクチンをめぐっては、アナフィラキシーショック、心筋炎その他の重篤な副反応例が紹介されていること等の不安から接種を見送り、あるいは、健康上の理由等から接種できない方々も多数存在する。本来、ワクチンを接種するかどうかは任意であり、個々人の自己決定に委ねられるべきものである。このことは、新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について定めた予防接種法改正の際に、衆参両院の附帯決議において「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること」と特に確認されているところである。

 上記の各附帯決議においては、「ワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと」等決議されている。また、田村憲久厚生労働大臣(当時)は、2021年1月27日の参議院予算委員会において「例えば、医療機関でワクチンを打たないと働けないであるようなことが起こった場合には、これは差別になります。こういうものがあるべきではない。」と述べ、2月5日の衆議院予算委員会においても「接種というものを義務づけるような形で各職場で何らかの差別的行為があることは、これは我々としては看過できない。」と述べている。

 現在、第3回目のワクチン接種についての検討と準備がなされているが、個人の意思に反してワクチン接種を事実上強制することは、一人ひとりの価値判断を尊重し、自己決定権を保障する憲法第13条からも許されるものではない。
 また、民間事業者を中心にいわゆる「ワクチンパスポート」の利用が広がりつつあるが、その運用次第では不当な差別となりかねないことからも慎重に運用すべきである。さらに、「ワクチンパスポート」を代替するものとして、いわゆる「陰性証明書」の利用が考えられるが、取得のための経済的な負担が加重となるおそれがあり、公費によるPCR検査や抗原検査などによってサービスの利用を認める仕組みを拡充していくなどの配慮が必要である。

 当会は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関して、ワクチン接種の事実上の強制や非接種者に対する差別的な取扱いが許されないことを強く表明するとともに、これからも新型コロナウイルス感染症に伴うありとあらゆる差別や偏見が許されないことを発信し続け、差別や偏見を防止するために全力で取り組むことをあらためてここに表明する。

2022年1月14日

山梨県弁護士会
会長 
八巻力也